【 オーク達 】 「ブヒッ!?」「ギッ、ギギッ!」
 

 一斉に背後を振り向いたオーク達の視線の先に、一人の女性が立っていた。

【 梓 】 「定時連絡がなかったから嫌な予感がしてたけど、こっちから出向いて正解だったわね」
【 瑞風 】 「あ……梓様!」
【 梓 】 「もう大丈夫よ。安心して、瑞風」
 

 雲間から差し込んだ月明かりの下、身の丈ほどの長さの太刀を背負った女性が柔らかい微笑みを浮かべる。

【 オーク 】 「ブヒヒィ!」
 

 オーク達は新たな雌の出現にますます興奮した様子で、ペニスをいきり立たせながら梓に襲いかかった。

【 梓 】 「どうやら詳しい話を聞くのは後回しにしたほうが良さそうね」
 

 8体ものオークを前にしながら、梓は微塵も動揺した様子を見せずに太刀の柄へと手をかける。

【 梓 】 「目覚めなさい、天津(あまつ)!」
 

 オーク達の手が四方から伸びたその刹那、梓の体が宙を舞った。

【 梓 】 「御影一刀流(みかげいっとうりゅう)、奥義――」
【 梓 】 「魔迅剣(まじんけん)!!」
 

 “神器(じんぎ)”と呼ばれる超常的な武器のひとつ――天津の白い刀身が月明かりに煌めく。

【 オークたち 】 「ギャッ!?」「ゴフッ!!」
 

 白刃から放たれた不可視の刃がオーク達の体を両断し、光の塵に変える。
 たった一太刀……それだけで残っていたオーク達はすべて消滅し、辺りに静寂が戻った。